「…俺、そろそろ…。」



時春が控え目にそう言いながら席を立つ。



時刻はすでに9時を回っていた。



「ハル、引越しちゃってるからお家ないよね…?今日はどこに泊まるの…?」



時春とは彼のお父さんの海外赴任で引越した為に離ればなれになったのだ。



彼の帰るところがあるのだろうかと、雪兎は思わず心配になった。



心配そうな雪兎に向かって、時春は優しく笑いかけ



「まぁ正直、こっちに来るのにバタバタしてて、アパート間に合わなかったんだよ。

すぐに見つかるだろうけど、しばらくカプセルホテルにでも泊まるつもりだ。」



「………!」



だから心配するな…と笑顔を見せて優しく雪兎の頭を撫でてくれるけど、やっぱりまだお家がないんだ…と不安になった。