とある山奥。
颪は再び奥まった山地の一角にアジトを再建し始めた。
男たちの威勢のいい声が響く。
しかし、多々良はやっぱり牢の中だった。
目の前で活気よく働く男たちを見つめているだけ。
だいぶ仲良くなったと思ったんだけどなぁ…。
どうやらそれは多々良の思い過ごしだったらしい。
確かにみんなの自分への態度は柔らかくなったが、信用はないらしい。
寂しく思いながら、多々良は今日も彼らを観察した。
都楼はもちろん、架妥も復活して働いている。
牢に閉じ込められているのは気が滅入ったが、彼らの元気な姿を見ているのは苦ではなかった。
「おい。」
近づいてきたかと思うと、架妥は高飛車な態度で多々良の前に仁王立ちした。
「何?」
にっこり笑って見せても、架妥の表情は変わらない。
…僕なりに歩み寄ろうとしてるんだけどな。
「お前、さっきから何を見ている。」
「何って?」
「あたしを見てただろ。」
あぁ、そのこと。