足元が悪い中、多々良は無心で歩き続けた。



先程まで降り続いていた雨はいつの間にか止んだ。



ありがたい。



多々良はせっせと足を動かした。



背中に背負った背嚢が重い。



山中を歩くには重すぎる荷物だ。



何しろ、着替えや多々良の財産すべてが入っている。



それでも背嚢一つに収まる量なのは嘆くべきか。



まぁ、僕は孤児だ。



それが当たり前。



いつものようにそう結論づけて、多々良は笑った。



顔に張り付いていた雨の滴が頬を伝う。



多々良はふと空を見上げた。



見上げれば曇天。



多々良の気持ちを表しているかのようだった。



今頃、院長は何をしているのだろう。



毎日のように、途切れることなく捨てられていく子ども達。



そして、毎日子どもの世話に追われる院長。



まだ若いのに、白髪が目立った。