この世で一番忌むべきもの。



それは、性別だと確信を持って言える。



職業柄なのか、架妥はいつも「女のくせに」と罵られてきた。



…女で何が悪い。



あたしが何をした。



「お前はお前だ。」



そう言った彼の顔をもう覚えてはいない。



捨て子だった自分を拾ってここまで育ててくれた恩人。



名の知れた山賊、桂月(カヅキ)はもうこの世にはいない。



逆光で余計に眩しく見えた彼の顔はもう思い出として架妥の中に仕舞われている。



この国で名の知らぬ者はいないであろう、伝説と化した山賊団、『颪』。



その頭の座を争っている桂月の息子、都楼(トロウ)はライバルとはいえど兄弟だ。



まわりがなんと言おうと、架妥は都楼を信頼し、また都楼も架妥を同じように思ってくれているはずだ。



だから架妥は迷わず彼に背中を預ける。