元治元年、九月―――


屯所の周りの景色は、未だ夏の気配を漂わせている。

太陽の日差しが強い季節は、洗濯物がよく乾くものだ。


バサッバサッ


「ふう…これで洗濯物は終わりっと……!」


一人で隊士の洗濯物を干し終えた矢央の額にはキラリと汗が光っていた。

こんなに暑いなら、近所の川に泳ぎにでも行こうかと思いたったが、生憎一人だと楽しくないだろう。


「平助さんは近藤さんと江戸に行っちゃったでしょう…原田さんは巡察で忙しそうだし、土方さんもだし。 沖田さんは、療養中だし、永倉さんは謹慎中…」


いったい誰と遊べばいいんだ、と落ち込む。


「……そだ! あの人がいた!」


善は急げと、矢央はある人物の部屋を訪ねた。



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