屯所に戻った矢央は、やはり土方にこっぴどく絞られた。


怪我が完治したからといって、療養中の身分でありながら勝手ばかりする沖田と矢央に、土方の説教時間はいつもに増して長引いた。


咳が治まらない沖田の説教は後回しとなったが、健康体の矢央は夕刻が迫る今も足の痺れに耐え


「聞いてんのかっ! てめぇは、何度言えばわかるんだ……」

「うう…ごめんなさい…」


土方の怒りは十分にわかったが、限界が近かった。

そろそろ足の感覚がなくなり、多分数秒と持たずに……バタン!


「もう…無理でひゅ〜…」

後ろに体を倒し、両足をピクピクと小刻みに揺らす矢央を見て、土方は頭を抱えるしかなく。


「…もういい。 今回は何事もなくすんだから良いとして、これからは自らの行動に注意しやがれ」


溜め息を吐く回数が、最近更に増えた。

新撰組が成長するのは土方にとっては最も嬉しいことだが、それに連れて悩みも増えるのだ。


「…あひっ。 ひ、土方さん…大丈夫ですか?」


足の痺れに体を捩らせながら、珍妙な動きで体勢を変えた矢央は土方の異変に気づく。


怒られたばかりだと言うのに、直ぐに切り替えられる性格に妙に感心する。


「お前から見て、最近の永倉の様子はどうだ?」


文机に向かい、書くわけでもないのに筆を掴む。

考え事をしたい時、邪魔が入らず済む方法を考えた結果、土方がとる行動だと矢央は気づいていた。