『杏里?……おーい、杏里』



愛しい声がする。


私はあなたの声をもっと聞いておきたくて、少し意地悪をするんだ。



『ちょっ、杏里無視すんなって』



そう、意地悪というのはあなたの声に反応しないこと。


ごめんね、リョウ。


ちゃんと話は聞いてるの。


だけど、もっともっとあなたの声を聞きたくて…――




「杏里、……もうっ杏里ってば!」



「んー……へ?」



「“へ?”じゃないでしょ。いつまで大音量で曲かけてんの?今何時だと思ってるのよ~」




怒鳴る姉をよそに、私は開かない目をこする。


さっきのは夢……か。



「お姉ちゃん、いま何時ぃ?」


「今?…もう少したら12時よ」


「えぇっ?!じゅ、12時ですか!」



一瞬で目は覚めた。


そうだ。


ラストクリスマスを聞いていて……思い出に浸って。


それからいつの間にか眠ってしまっていたんだ。