「…ありえないっ!」


あたしの朝の第一声は、これだった。


目覚まし時計を掴むと、その針は一向に進んでいない。


あたしは目覚まし時計をベッドに投げつけると、急いで身支度を始めた。


「もーっ!何でよりによって今日なのよ!」


悪態をつきながら、乱暴に鞄を掴み、部屋を出た。


「お?寝癖ひどいぞ、莉緒」


「うるさいっ!」


たまたま近くにいた兄が言うけど、寝癖に構ってる暇なんか、あたしにはない。


…だって、今日は。


「何で起こしてくれないのよ!試験なのに―――ッ!」


そう。大学受験の日だった。



―――古宮 莉緒(こみや りお)。


大学受験を間近に控えた…っていうか今日だけど、高校三年生。


この大切な日に、寝坊だなんてありえない!


「お兄ちゃんのバカ!」


「んな!? 兄をバカにすんなよ!?」


「アホーッ!」


幼稚な捨て台詞を吐いて、あたしは玄関から飛び出した。