「お兄ちゃーん…っ…」



仕事の途中に迎えに来てくれた、お兄ちゃんに校門とか関係なしに抱き着いた。

止めどなく流れる涙の理由(わけ)は、自分でもわからない。

けど、久しぶりに甘えたお兄ちゃんの温もりは、今も昔と変わりなくて……温かい。

本当は“仕事に行かないで”と、言いたい。

でも実際は言えない。

家に着き、玄関先でお兄ちゃんと別れ、私は鍵を開けた。

敷居は段になってる為、私はそこに腰掛けてローファーを脱ぐと、また涙が溢れた。

私の背中を包むのは、真っ暗な、冷たい廊下。



「ふぇ…んっ…」



どうして、両親が居ない事を、今になって、私は気にするのだろう。

風邪で弱ってるから?

誰でも良いから会いたい…―
誰か私を抱き締めてよ…――。