【理子side】



「あ~!!マジ暑いんだけど!!」


ナナはYシャツの襟元を掴んでパタパタと中に空気を送り込む。


季節は夏になった。


高2の夏。


受験もまだだし、多分一番楽しい時期。


それなのに手放しで喜べない理由がある。



「っていうかさ、紫苑くん、また違う女と一緒にいるよ?」


「うん。そうだね」


「本当は気になるくせにっ!!」


「別にそんなんじゃ……」


「まったくもう。素直になんなよ~!!」


ナナはニヤニヤしながらあたしを煽(あお)る。


あたしは小さな溜息を吐くと、廊下で楽しそうにしゃべる男女に視線を向けた。


一つ年上の綺麗な先輩。


色気ムンムンで、胸が大きい。


小麦色に日焼けした健康的な肌。


スカートから伸びるスラッと細い脚。


ここ数日間、紫苑と先輩っていう組み合わせをよく見かける。