――あのあと、あたしはどうやってお店に戻ったんだろう?

 ちゃんと仕事が出来たのかな……? よく思い出せない……

 帰り道の記憶も朧気で、気がつくとアパートの自分の部屋の中にあたしは佇んでいた。

「……」

 ひとまずカバンを置いてテーブルの前に座り、ポケットに入れていたそれを取り出す。

 白い紙片――

「090――……」

 そこには、確かにシンさんの携帯の番号が書かれている。

 捨ててもいい、って言われたけれど。

 結局、あたしはポケットに入れて持って帰ってきた。

「……」

 何度もその番号を見つめる。

 走り書きされた数字とハイフン。

 黒インクで書かれた、大人っぽくって少し格好いい整った綺麗な字。

 思わず指でその数字に触れる。

 それだけで、胸の鼓動が早くなってしまう。