奈津美は、帰り道、一人悶々としていた。


 あんな話を聞いたら、嫌でも考えてしまう。


 自分は、旬にとってただ都合のいい女なのだろうか。


 カオルにああ言われたし、奈津美だってそう思う。……思いたい。だけど、あの話はやけに説得力があって、そんなことない、と否定しきれない。


 そう思うと、最悪だ……と、自己嫌悪に陥る。

 他の人間の話を聞いただけで、自分の彼氏をそういう風に思うなんて……


 旬がそんな風に思っているはずないじゃないか。

 旬は、素直な性格だし、嘘をついたらすぐ分かる。というより、元から嘘を吐いたりなんてしない。そういう人間が、他人をいいように使うなんてこと、できるはずがない。


 大体、旬は甘えてばかりというわけではない。相変わらずデートの時に割勘を嫌がって払いたがっているし、別に何もせずに食わせて貰おうという意識はないはずだ。……未だに奢れるほどの懐は持ち合わせていないが、それはこの際どうでもいい。


 何だか、そう考えるとだんだんポジティブになってきた。


 そうだ。それに、旬は奈津美のことを嬉しそうに話してたと言っていたではないか。……主にスタイルを。


 旬は女性の胸が好きらしい。いつも抱きついてくる時は胸を触るし、二人きりの時は『ナツのオッパ~イ』と嬉しそうに言いながら顔を埋めている。

 いつだったかは、ある童謡の替え歌で変な歌を作っていた。



ナツ~のオッパイいいオッパイ・すごいぞ~すごいぞ~
巨だ~いマシュマロでできている・でかいぞ~でかいぞ~


 ……カオルなんかが聞いたら爆笑だったんじゃないだろうか。さすがに言えないので分からないが。


 とりあえずこれも一応誉め言葉として取れば、嬉しい(?)わけだし、胸は旬の好み通りということで、喜ばしい限りじゃないか。