【円】

こんなに甘い食べ物を生まれてこのかた初めて食べた。

これまで口にしたいかなる甘味でも、ここまで甘いものはない。


これはなんだ?

この世の甘さの限界に挑戦か?


アレか?

つまり、俺が甘いもの好きだと知っている留玖が、この俺のためにこの世の限界に挑んでくれた──

──と、こういうことなのだろうか。



マヒした脳みそで、俺はぼんやりとそんなことを考えて、



「どうかな?」

愛しい声に、ぎくりとする。

「私、おいしくできたかなあ?」

留玖はにこにこと、まぶしすぎる笑顔で俺を見つめていた。


う!?


「あ……ああ、留玖、ええとな……」


自分でも視線が泳ぐのがわかった。


この場で膳を前にした者全員が、俺に何かを期待するかのような目を向ける。



な……なんだ!?

かわいいかわいい留玖に向かって、
この俺に何を言わせようってんだ、てめえら。



「うん、なあにエン」

どこまでも無垢な美しい笑顔のまま、留玖が愛らしいしぐさで首をかしげる。



うっ!?



「留玖、この料理なんだけどよ……」



停止した俺の頭が俺の口に言わせた言葉は──