【剣】

円士郎の側室になってすぐに、

私は参勤交代にくっついて江戸に行って、見るものが何もかも珍しい江戸の町で円士郎と一緒に一年を過ごして

その帰り道に彼と一緒に武者修行の旅に出て、各地の道場や名のある達人のもとを訪ね歩いて──


慌ただしい毎日を送るうちに、あっと言う間に一年半が過ぎた。


だから

円士郎とずっと一緒にいられることになってから、
私にようやく落ち着いた日々が訪れたのは、国元に戻った十月のことだった。

住み慣れた国に帰ってきて、

お城の奥御殿でやっと色々なことを考える時間ができて……



「殿の側室になった気がしない?」


美しく染まった庭の紅葉を横目に
御殿の一室で向き合って将棋を指しながら、私の正面に座った亜鳥は首を傾げた。