「ユウヤは、わたしをどんな人間だと思ってる?」




唐突な質問だった。

そう問い掛けるナキの声は、先ほどとは違い、とても強いものだった。



「正直…記憶喪失なのかと思った。なにを聞いても答えてくれないし、」




“ハネの病なのに自分は死なない、と断言してるし”と続く言葉を途中で切った。

言ってはいけないような気がした。




「…ごめんね。わたしがなんにも、喋らないからだよね。」



長いまつげが影を落としている。

伏せた緑の目が綺麗だった。




「ずっと言えなかったの。言ったら離れてっちゃう気がして、ユウヤに嫌われたくなかった。」



「ナキ…?」



「ユウヤはわたしのこと“綺麗”って言ってくれたから、あの人以外にそんなこと言ってくれた人、いなかったから」



「ナキ、落ち着いて」