この声は……。


「……」


は……。

……誰……だっけ。


いや、聞き覚えはあるんだけど!

だーれだっけ?


「チッ……」


隣で小さく舌打ちするのが聞こえ、思い出した。

舌打ちといえばあれだ!

あの女じゃない?

入学当日一回出てきたっきりの嫌われお嬢様。


パパったら麗子のためならなんでもするよと言ってくだすって、はぁと、の女!


「楓様❤……ん? なんですのその女は。また連れてるんですか?」


…なによっ。こっちの台詞よ。

また出てきたの? なんの用?


……と気勢を張ってるのは心の中でだけ。

実際はかっくんの後ろに半身を隠し、迫力ゼロの眼光で睨んでるだけ。


「お離れなさいな。この方をどなたと心得るの?」


な……なによっ。

水戸黄門かってーの。あたしだってそんくらい知ってるんだよ。

日本といえば時代劇でしょ?

いっぱい見さされたんだ。