ピピッ、ピピピッ…




『……もう、朝か…』




朧気な意識の中、ぽつりと呟いた。


頭が痛い。


昨日のことを思い出す度に、胸が押し潰されそうなほど苦しくなる。


…あたしは胡桃坂さんと、取引をした。




―――昨日。




『……っ、もう蕪城先生とは絶対に2人で会わないから!補習もでない!だからお願い、あたしのこと誰にも言わないで…!!』




頭を下げて懇願するあたしを見て、胡桃坂さんはクスクスと声を漏らして笑っていた。


どこから見ても上品に笑っているのに、あたしの瞳にはそれがひどく醜いモノに映った。




「うふふ、やはり自分が一番大切ですわね。あなたと言えど、そこは変わりませんわ。……良いでしょう、その条件を飲んでさしあげるわ」




胡桃坂さんに見えないよう、にやりと笑みを浮かべ―――あたしは感謝の言葉を述べた。




「でもまさか、あなたがこんな薄汚い庶民だったとは…。頭が悪いのはその所為だったのね、お馬鹿さん。こんなエリート校に無理して入って、本当にあなたは無様ですわ」




次々と浴びせかけられる罵詈雑言は、あたしの耳を掠めて空気に溶けていった。



……全部しっかり聞くなんて、馬鹿馬鹿しい。