僕の前を砂利道が続いている。


そこでふみが丸まっていた。


足を三角に折って、砂利を手で払いのけては何かを呟いていた。


「ふみ」
 

僕が手を上げて妹のふみを呼ぶと、ふみは一瞬、泣きそうな顔をした。


立ち上がって目の前の砂利を綺麗に足でなでると、何事もなかったように笑って手を振り返すふみは、まだ十歳の子供のようだった。
 

ふみはもうすぐ二十歳になる。


それを知っているのはこの町で僕だけだ。


ふみのたった一人の家族である僕だけなのだ。
 

両親はいない。


僕は知らない。


ふみと僕は同じ年に生まれて、一緒に育った。


だけど、僕の記憶の限りで両親なんてものはいなかった。