気がついたら力士が背中に
真っ赤で大きな花を咲かせて倒れていた。

鉄の匂いが鼻をくすぐる。
自分にも血がついているのだと気づいた。

自分に斬りかかってきた力士は、
沖田さんが斬ったのだ。
まさに間一髪。

「智咲さん。
大丈夫ですか?顔色が真っ青ですけど・・・」

沖田が智咲の顔を覗き込む。

「あ、はい。
何もどこも怪我はしてません。」

智咲は一生懸命微笑もうとするが、
顔に血がついていて、
うまく笑えない。顔が恐怖で引きつる。


「怪我したものはおらぬか!
今日はいったん宿に戻って体を休める!」

芹沢が大声を上げながらいう。

智咲はぼぉっとしていたが、
「え、えへへ。
総司さん。いったん、何処か行ってきますね。
ちゃんと血、落としてきますので。」

といってどこか走り去っていってしまった。

その後を沖田が追う。

「待ってください!
智咲さん!」

智咲が先に走り始めたので、
沖田は智咲を見失ってしまった。


辺りを見回すと、
川の方から音がする。

智咲は川に入っていた。

「智咲さん、もしかして。
死のうとしてるのかな。」

沖田は急いで智咲の元へ向かう。

ばしゃんばしゃんッ

沖田は智咲の腕強引にを掴む。
水が腰の辺りまで来ていた。

「智咲さんっ何やってるんですか?!
そんなに人が死ぬのを見るのが怖かったんですか?!」