その日、牧師におつかいを頼まれたマリは、小走りに家である山手の教会へと帰る途中だった。

随分遅くなってしまった。

本当はもう少し早くに帰るつもりだったのだけれど、つい道草を食ってしまったのだ。

牧師はとても優しく、マリによくしてくれるけど、門限が早過ぎるのが唯一の不満と言えば不満だった。

もう周囲もすっかり暗くなってしまっている。

帰宅したら牧師に叱られるだろうか。

その事が嫌な反面、嬉しくも思う。

…マリに両親はいない。

彼女が物心つく前から、両親はいなかった。

マリは教会の前に無造作に置いていかれていたのだと、牧師はやや言いにくそうに語って聞かせてくれた。