夜。

颯太は美原市外縁まで足を延ばしていた。

ここはかつての絶望の地。

人口10万もの都市でありながら、華鈴の遺したノートの記述が正しければ…たった一体の死体によって寄生虫が蔓延し、全市民がほぼ全滅の憂き目に遭った災厄の地。

僅か数名の人間のみがこの街から生きて脱出。

残る者達は…もしかしたら他にもいたかもしれない生存者も含め…政府の要請によりアメリカからの核ミサイルによって焼き払われ、今となっては見渡す限りの荒野と化した。

事件当時の名残など一切残ってはいない。

残っているのは近しい者を奪われた憎悪と悲しみ、そして対応の遅れによって最愛の人達を奪った国への怒りのみ…。