秋晴れ爽やかな朝。近所の本屋さんがシャッターを上げるのを見下ろしながら、真っ白に洗われたタオルをベランダにかけて私はふう、と一息つく。

乾いていない洗濯物はちょうどいい重みで風になびき、陽の光をきらりとうける。

「あー、秋はいいねぇ。実にいい」

思った事を声に出して言ってみると思ったよりおっさん臭い台詞だったので自分のことながら少し動揺したがまぁいい。

気持ちいいものはいいのだから。

「ちょっとー、アキー」

背後から名前を呼ばれる。

私は振り向くことなくベランダの手すりに頬杖をつきながら背中で答える。

「なぁーにぃー?」

「もう洗濯物終わったんでしょ?ちょっとこっち来て助けてよ」

ハルの声だ。ほとほと困ったという様子が大変よく伝わってくる。

「うん、あともう少しで終わるからー」

私はあくまで振り返らない。

「終わってんの丸見えなんだけど。もうナツ置いて帰るわよ」

それは困る。くるりと回れ右をする。そして部屋の中を見てハァ、と静かに溜息をついた。