中学の卒業式の日。

「あんた、篠雪 聡センパイ…だろ?」

聡は道路の真ん中で、一人の少女に呼び止められる。

まだ幼ささえ残る顔立ちの、清楚な雰囲気の少女。

しかしその端正な顔立ちとは裏腹に、少女の目には野心が見え隠れしていた。

「ここいらじゃあ強いんだって?美原にある五つの中学全部制覇したとか…私らの学年にも、センパイの噂は広まってるよ」

「……」

聡は咥え煙草をペッと吐き出す。

「どこでやるんだ?俺も忙しくてな。てめぇみたいなガキの女にいつまでも構ってられねぇんだ」

「…話が早くて助かるよ」

不敵な笑みを浮かべ、拳を握る少女。

聡はこの後、人生初の喧嘩での大苦戦を強いられる事となる。

「…まぁ名前は聞いといてやるか。俺に喧嘩売る初の度胸ある女だしな」

聡の問いかけに、少女は走り出ると同時に叫んだ!

「神威 心花だ!忘れられねぇ名前にしてやるぜ!」