「あれ、さゆみちゃん」


私じゃない名前を呼ばれ、
首を箭内さんのほうに向ける。


私はまた
ホテルにいて

他人に抱かれていた。




この人の前では、
上原美里じゃなくて

早川さゆみを演じる。







「もう服着ちゃうの?
もう1回―…」


「このあとも予定あるんで」




「ふーん…
忙しいね。今日で3人目かあ…」




私はすみませんと言って
ホテルを後にした。




次に、いつもの
ホテル・SKYに行った。



「遅かったね、香苗ちゃん」




-香苗ちゃん。


松坂さんの呼び名だ。




「すみません、
前にも入っていたものですから」