◇ ◇ ◇



耳元で着信音が聞こえてくる。


設定は小にしている筈。


なのに着信音が大きく聞こえるのは時刻に原因があるんだと思う。


喧しい着信音に叩き起こされ、俺は唸り声を上げながらベッドサイドに手を伸ばす。


目覚ましの隣に置いてある充電中の携帯を手探りで探し、どうにか携帯を探り当てるとコードを抜き取って耳に当てる。


声が聞こえない、あ、俺、ボタン押してないや。っつーか誰だよ、こんな時間に電話してくる奴。


靄がかかった思考回路をどうにか動かしながら、俺はボタンを押して「もしもし」と声を掛ける。携帯の向こう側から聞こえてきたのはハイテンションボイス。



『ヘイヘイヘーイ! グッドモーニング、ケイちゃーん!』



アリエネェ。ワタルさんからだよ。


『お元気? 今、もすかすて彼女とお楽しみ中? いや~んケイちゃーんったらやるぅ!』


眠い。


「ワタルさん。おや、すみなさい」


『わわわっ! もしもしケイちゃーん?! 折角のお電話切っちゃうの?! もっとお喋りしようよー。
どうせ、彼女いないでしょー。お楽しみ中じゃないでしょー。ケイちゃーん童貞でしょー』



何を言ってらっしゃるんだ。この人。

俺は眠いんだよ。スッゲェ眠いんだよ。

今何時だと思っているんだよ、四時半だぜ。起きる時間には早過ぎるって。嫌がらせ電話にも程があるって。


しかも最後の嫌味は痛烈だっつーの。

どうせ彼女出来たことねぇよ。


大きな欠伸をして俺はウトウトと夢の世界に旅立とうとしていた。


『もしもーし! ケイちゃーん起きてるー?』

「んー……起きてますよ……」



『ちょ、ほんとに起きてる? まあいいや。ケイちゃーん、ヨウちゃーんからの伝言。今日の放課後空けといて欲しいんだって。自分で伝えろって話だよねぇ。僕ちゃーんをパシリにするなんて。いや、ヨウちゃーん今、喧嘩で』  



もう駄目。俺、眠い、限界。


携帯から聞こえる声をBGMに俺はおやすみなさいモードに入った。


そして早朝、目が覚めた俺はベッドの上に転がっている携帯画面を開いて盛大な悲鳴を上げることになる。