……うーん。

「ちょっと、離れて歩いてくんない」

ってゆーか!学校まで一緒に通うなんて聞いてないわよ!
母さんは『王家』ってことにびびってあっさり滞在オッケーしちゃうし。

「いいじゃん、別に。その宿題ってやつも俺の『魔力』があれば一瞬だろ」

……確かに。
しかも敵に借りを作ってしまったような気分だ。

「でもぜぇーったい!!あの力は学校や外で使ったらダメだからね」

他の人に見られたら私たちもここに居られなくなる。
それだけはゴメンだ。

「わかったよ。因みに俺のこっちでの名前は『真城紅皇(ましろべにお)』、紅皇でいいから。昨日一日で考えたんだ、なかなかいい名前だろっ」

「はいはい」

ここで突っ込んだらかわいそうかも、なんて甘い考えが頭の中を過ぎってしまった。

「それにしても、えっと──」

まだ自分の自己紹介を彼にしてないことに気付いた。

「林檎、種無林檎だよ」

「林檎って本当に昼間は『女』に戻るんだね」

「……ばかっ!あんま大きな声で言わないでよ!誰かに聞かれたら──」



「おはよう、林檎ちゃん」



そ、その声は、

「七瀬先輩っ!!!!!」

「そんなに驚いてどうしたの?」

七瀬先輩は一つ年上で背も高くてスタイルも抜群、女子の憧れの存在なんだ。

「な、なんでもないです!!!!!!」

自分の頬が紅く染まっていくのを感じていた。

「あ、そうだ。今日の仕事は来週に延期になったって鈴に伝えておいてくらないかな。あいつ住所も連絡先も教えてくれないから、連絡のつけようがなくてさぁ。あいつとイトコの林檎ちゃんなら連絡つくかなって思って」

「分かりました。伝えておきます!!!」



実は私が『男』になって俳優業やっているは、先輩のお祖父さんが経営するプロダクションを救うために、私がイトコって偽って『鈴』を紹介したことから始まった。因みに先輩は学業を優先したいからと芸能活動はしていない。たまに事務的なことは手伝っているくらいかな。