『梨紅ちゃんはいいよね、顔が可愛いってだけで大きい仕事もらえてさぁ』

『演技ヘタクソでも特別扱いしてもらえるから、顔がいいって得だよね』

『何で桜庭みたいな大根子役がヒロイン張れんの?信じらんない!』

『芸能プロダクションのロリコン社長に、体でも売ってんじゃないの?』

…梨紅はそう言われながら、天才子役と呼ばれるまでに登り詰めた。

演技が下手だと言われれば、寝る間も惜しんで演技の勉強をした。

台詞が棒読みだと言われれば、日に何時間も台本片手に台詞の練習をした。

努力は惜しまなかった。

だけどどんなに努力しても、頑張ってみても、認めてくれない者は絶対に認めてくれなかった。

華やかなスポットライトに照らされる芸能界という世界。

しかし一歩スポットライトから離れれば、そこは嫉妬と欲望に満ちたどす黒い世界だった。

剃刀入りの脅迫状を送りつけられた事もある。

台本をズタズタに引き裂かれ、ゴミ箱に捨てられていた事もある。

だけど自分を応援してくれるファンの前では、そんな事は億尾にも出さず、梨紅は常に笑顔で振る舞った。

それが一番最初に覚えた『人を騙す事』…。