アタシはマニキュアを塗らない!
爪も伸ばさない
肩に少しつく長さの髪の毛先をくるくるかわいくする時間もない!!

朝、普通の女子高生が起きるにしては早い時間に目覚ましをセットして、メイクをすると朝ごはんとお弁当を作る
制服に着替えたら、あっという間に登校時間

友達が合コンやコスメのことを考えてる時間、アタシは夕飯の献立や明日のお弁当の中身を考えたりしてる


梅雨らしく、はっきりしない空模様の下

「おはよ」

「オス」

朝に弱い直也から不機嫌な挨拶が返された

「これお弁当ね」

手渡すとお礼代わりかのように「作ってもらってて悪いんだけど、もうちょっと量をふやしてくれるとありがたい」といわれる

「いいけど・・・」

隣に住む直也は母親が早くに亡くなって男世帯で暮らしていた

5つ離れたお兄さんは社会に出てサラリーマンになると同時に家を出た

相反して女世帯のアタシは直也のお兄さんの自立をきっかけに、高2になったこの春から直也の分のお弁当を平日毎日作るようになった

アタシの母親は生まれながらの水商売気質で、小さいころから昼夜逆転の生活

お弁当なんて作ってもらった記憶はないし、学校の行事だってまともに参加してくれたこともなかった

おかげで料理はすごく得意だし、好き勝手しても文句を言われることもなかった

それに、収入の良い母親のおかげで不自由だってしたことない

恵まれてるっちゃあ恵まれてるんだろうな・・・

ふと隣に目をやった

昔っから短髪、でも中学生くらいからはただの短髪からおしゃれな短髪に変化して、ツンツンいろんな方向にむかって立ってるけど…

男っていいな、適当でも“無造作ヘア”なんていってもらえて
これが女ならだらしない寝癖ヘアになんのに…