穏やかな昼下がり。

降り注ぐのは、春のやわらかな日差し。



まるで、絵具を落としたみたいに空は青く澄んでいて。
綿菓子のような雲がフワフワと、のんびり泳いでいた。


気持ちのよい午後。
だけど、あたしの心はずっと薄曇り。







「はあ……」



今日も、何度目かの溜息をついて開いていた教科書をパタンと閉じた。


突き刺さるのは……。




視線
視線
視線!





原因は他でもない、目の前の彼だ!





相変わらず高級そうなティーカップを片手に、英文の本に視線を落としているハロルド王子。

ヒロ兄になぜか王子のお世話を任されたあたしは、女子たちの怨念にも似た視線を受け続けていた。




『なんであの子なの?』

『あんな地味な子がどうしてハロルド様のおそばにいられるのよ』




……勘弁してほしい。
聞こえるように言ってる?


そんなような陰口は、もう毎日。


だけど、彼女たちはうまくやっている。
王子には聞かれないように、あたしとすれ違う時にわざと言ったりだとか、いろいろ試行錯誤してるらしい。


そーいう努力と言うものを、ぜひ他に生かして欲しいもんだ。