「いやーん、今こっち見て笑ったわぁ」

「え? やだ、あたしを見たのよ!」




毎朝……
うんん、毎日1日中どこにいても聞こえる歓声。

周りの女子たちが頬をバラ色に染めて、うっとりと目を細めてる。



「今日も素敵ね、ハロルド様!」







ハロルド……。

その名前に、少しだけ視線を送る。
見ると、桜の木の真下に添えつけられてるベンチに人影。



やわらかそうな真っ黒の髪が、フワフワと春風に揺れて。
伏せられた長いまつ毛の奥の瞳は、膝に置かれた本に落とされていた。


モデル顔負けの容姿とルックスと
淡い色合いのカジュアルな服も手伝って、その光景は人ひとつの絵のようだった。