「迎撃ユニットの全滅を確認」

「まあ、いい、情報は取れたか?」

「ユニットからの分析情報から、1件ヒット。帝国軍第7航宙艦隊所属の強襲戦艦〈ザカーエッジ〉です」

「ほう、帝国も本気らしいな。確か、虎の子のハイジェルマン粒子砲を装備してる筈だ」

「公開情報では2門装備とあります」

「あんな物2つも持ってるなんて、恒星でも壊す気かね」

「餌は本物ですからね」

「偽物に引っかかるほど、連中は甘くは無いよ」

 そこまで言って、300メートル級特務工作艦〈クーロン〉の艦長兼操艦士ブンガクは4つ腕の下腕でハードコマンドをコンソールのキーボードに打ち込んだ。

「また、そんな物使ってる」

 それを見て、オペレーターのチャオクーンは口調を崩し、呆れ顔で言った。

「指を動かすと脳が活性化していいんだぜ」

 ブンガクは上腕でクーロンの情報端末をセットアップしながら言い返した。

 クーロンにはこの2人しか乗船していなかった。

 2人とクーロンは、今回、新造のプラント艦の資源採掘時の防衛任務を依頼された傭兵会社の所属だった。

 任務には他にも大手傭兵会社の艦隊が参加している。

 指揮権はそっちが持っているが、クーロンは情報処理のサポート役として一定の独立指揮権を与えられていた。

「情報空間が活性化してる。過去の帝国の艦隊パターンとは違うわね。何だか、艦隊と言うより巨大艦みたい。1番近似しているのはデウドラシャルテね」

「前大戦の巨大不沈戦艦か」

「まあ、効率はそれよりは遥かに高いわ」

「だとすると、噂の新システムか。なら、どこまでやれるのか、お手並み拝見だな」

「こちらの艦隊のサポートはどうするの?」

 チャオクーンの言葉にブンガクはクーロンの仮想戦術機能で艦隊戦を1.2秒間シミュレートしてから答えた。

「65532回やってみたが、まあ、良いんじゃないかな。ほっておけば」

「あら、そうなの?」

「ああ、何回やっても勝てないからな」

「あのね、ブンガク。私達が、何の為にこの仕事を受けたと思ってるの?」

 チャオクーンは、ショートカットの緑の髪を振り乱して、きっとブンガクを睨んだ。

「やっぱだめかね」

「だめよ」