「熱、高いな」


実里の額に手を当てて、ホッと息を吐く。


そのまま台所に向かい、冷蔵庫を開けた。


「買い物行ってくるか」


押入れから布団を一枚取り出し実里に掛け、車のキーを持ち家を出た。


「まったく」


あれほど言っておいたのに、実里は何一つ守ってない。


出張に出かける前、風邪気味だった実里にちゃんと薬を飲むよういい、寒くなってきたから布団をもう一枚出すように言っておいたのに。


薬は封を開けた形跡はないし、布団は押入れにしまったままだし。


風邪が悪化したのも、自業自得だ。


鶏は3秒たったら忘れるっていうけど、実里も同じようなものだな。


信号が赤で止まったところで、時計に目をやる。


「8時か」


いつもならまだ仕事をしてる時間だ。


今日は5時に会社に帰り、そのままキリのいいところまで仕事をするつもりだったが、実里のせいで計画丸つぶれ。