今までのアパートから、一軒家に越してきたのだ。

テンションが上がらないはずがない。

玄関をはいってすぐの大きな扉。ここがリビングだよね。

まだソファーも何もないはずだけど・・・


かちゃ。


うん、広くて綺麗。


素敵な窓、あったかい色のフローリング、積んである大量の本、眠ってる少女、白い壁、おしゃれな電気。


ふふ、今日から本当にここに住むんだなぁ・・・




ぱたん。




いやいやいや。



今おかしかったよね。


何かあったよね。

本が。

いやそっちじゃないってば。


見間違いじゃなければ、いや見間違いだといいんだけど、私と・・・



・・・同じ顔してた?



・・・かちゃ。


「んむぅ・・・」

あ、いる。まじでいるよ。寝てるよ。

起こさないように、そっと近づいてみる。

・・・。

・・・同じ顔、だよねぇ。
本に寄り掛かって寝ている少女は、どうみても毎朝鏡で見てる顔とそっくりだ。
私より肌が白くてきれいな気がする。

ワンピースから覗く足は私より確実に細い。

上は何故か着込んでいるけれど、細いのがわかる。

髪は私より茶色い。栗色の髪はさらさらしていて、細く柔らかそうだ。

ストレートの髪は私と同じくらいの長さだ。私は今二つに結んでいるが、とったらそっくりだろうと自分でも思う。

「ん・・・ふ?」


あ。

起きた。

「あ・・・お、はよ・・・う?」

「・・・。」



ぱふん。

「・・・・・・。」

「・・・え、あの、えと、

彼女の白い手は、初対面の私のパーカーの、その、胸に置かれた。

「な、なんでしょうか・・・?」

敬語になってしまった。

「・・・」


彼女は無言のまま(怖い)コートのポケットに手を突っ込んで、

ナイフを取り出した。


「死ね」



え、何これ。