【勇輝サイド】



『…やっべぇ。』



俺は目頭を押さえながら、その場に座り込んだ。


妙に、頬が熱い。




――ほぼ、無意識だった。


気づいたら、美穂の柔らかい黒い髪に触れていて。


自分に引き寄せるように、美穂の顎を持ち上げていた。




『…本当、ありえねぇ。』



そんな俺の声は、やけに騒がしい教室にかき消されていく。



本当、ありえない。


美穂に無意識に触れていた、自分が――…。