僕は戸棚にしまわれた。悲しみが消えることはなかった。
戸棚にしまわれてから10年が経った。僕の自慢の茶色くて手触りの良いブワブワした毛はもうすっかりほこりにまみれていた。ほこりが積もるごとに、悲しみも増していった。
彼女に会いたい。どうかその澄んだ声で僕の名前をもう一度呼んでおくれ。どうかその優しい手でぎゅっと抱きしめておくれ…。
僕は泣きながら眠った。ひとりぼっちで眠った。
泣きながら夢を見た。
100年間夢を見た。