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雪花-YUKIBANA-

第一章
東京へ



20年を振り返る。

不自由の多い人生ではあったと思う。


子供の頃はどうしても、僕は個人ではなく家族の一部で。


たとえその家族というものが、僕に対して心地よいものではなかったとしても、

“子供”はそれを甘んじて受け入れるしかなかった。


だから父と離れ、
数年後に母を亡くし、

初めて個人として自覚したとき
僕は思ったのだ。


――あらゆる不自由は、
他人と混ざり合うことから生まれるのだ、と。



それからはなるべく密な関係を避けて、

求めすぎることも
奪い合うこともなく、

うまく生きてきたはずだった。


なのに。






とんだ真相発覚となった父の葬儀も無事に終わり、

僕は名古屋でいつも通りの生活を取り戻していた。


僕の朝は、世間では夕方と呼ばれる時間帯に訪れる。


太陽ではなく月の下で交わされる、
「おはようございます」
の挨拶にもすっかり慣れた。



風俗店のスタッフ。


かれこれ2年ほど、この仕事を続けている。

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