暗闇に浮かび上がった建物、その屋上に人影があった。ここはどこなのかなんて分からない。周りには誰もいなく、冷たい風が草木を揺らして音を立てていた。

 人影の顔は見えないはずなのに、何故か私はそれが中崎くんだと分かっていた。

「中崎くん、駄目!」

 私は叫んだ。人影がふらふらと屋上の縁へ近付いてゆく。既に爪先ははみ出ていた。



 地面へ吸い込まれるかのように、中崎くんが落ちていった。



 ぐしゃり、と身体のひしゃげる音と共に鮮血が飛び散る。顔を覆いたくなるような光景なのに、私は脇目もふらず仰向けに倒れた中崎くんに駆け寄った。

「中崎くん……」

 つぶやくと、つむっていた中崎くんの目がいきなり見開かれた。憎悪に燃えた瞳、そう感じた。そして私をまっすぐ見ながら、口を開いた。



「お前のせいだ!」



 空間が歪み、私の意識は遠のいていった。