夏の大会が終わると、
世代交代により、
一からの猛特訓が始まった。

おかげで、中学初の夏休みは、
バスケ一色で、新学期を迎えた。


部活で会って、知っていた私と違い、
隆志の変声期を迎えた声に戸惑う
鈴ちゃんの夏休みも、
野球部で、かなり忙しかったらしく…

でも、あまり会えなかったワケには、
もう一つの理由があった。


野球男子部員の支えとなる、数の少ないマネージャーは、
マスコット的存在。

只でさえ健気な鈴ちゃんは、恰好の彼女候補だとか。


そして鈴ちゃんは、
渾身的にアタックしてくる先輩にオチ、
他の部員に影響を与えぬ様、
極秘で“おつきあい”をはじめたのだった。


そんな大事な秘め事を打ち明けてくれたのだから、
私も恭一との、何も変わらぬ一件を報告した。


「そっかー!おめでとうって言うべきなのかな?」

「いいの。そんなんじゃないから…それより、あたしこそ鈴ちゃんに“おめでとう”で良いの?」

「え?」

「余計なことでごめんね。ただ…隆志のことは?」

「聞かれると思った!実はね…私、コクってもナイのにフラれるという、前代未聞の失恋をしたの」

「なにそれ?いつ?」

「おたく等が勝手に盛り上がってた頃ってことか〜。
隆志にノート貸して、それを返してもらった時にね、『ありがとう。鈴木が友達で助かったよ』って」

「えー。それは、そんな深い意味じゃ」

「わざわざ“友達”って言うってことは、そうなんだって!」