「 ディート伍長! 」

「 はっ! 」

 アメリカ合衆国陸軍 機動大隊の一員として、ロシア連邦との共同作戦に参加していた ディート・ランサー伍長 は、チェチェン共和国の北カフカス地区に仮設された前線基地内兵舎の中、大隊長であるログウェル大佐に呼び止められた。
 兵舎は、プレハブ小屋ともコンテナとも言える物を繋げた、無機質かつ雑多に兵員の荷物が散らばる宿舎である。

「 ディート伍長、戦車長は残念だった 」
 ログウェル大佐はディートの肩を軽く叩く。

「 はい 」
「 まさか、M2Cパットンの中ではなく、テロで亡くなってしまわれるとは 」
 M2Cパットンとは、2030年を過ぎ、米陸軍に供給され始めた最新鋭重戦車の事だ。

 小型EMC兵器の代名詞。
 商標登録名、E・D・G(エレクトロスタティック ディスチャージ ハンドグレネード)が全世界に行き渡り、激変してしまった戦場は、近代的な誘導兵器の存在意義を失わせていた。