私の右半身に少しの変化が見られて、前よりも本格的なリハビリが始まった。

「……っ…」

「頑張って…珀ちゃん」

秋頼先生とのリハビリ。
本気で…こんなに辛いと思ったことはない。
正直、今の自分の精神力じゃ…このリハビリは乗り越えられない。

今、私は、自分の不甲斐なさに腹立っていた。

「珀ちゃん?」

「…あ…すっすいません」

秋頼先生に悟られてはダメ。
私は…必ず…ピアノを取り戻すんだから。
自分を…自分の場所を…取り戻す…

「……休憩する?」

秋頼先生は、優しいから…こんなにも甘い言葉を私にかけてくれる。
でも、甘えてはダメ。
この壁を壊さなきゃ、私に次の道は無い。

『急がば回れ』

今の私に、この言葉はぴったりだった。