ケータイ小説 野いちご

貝殻の夢


海岸に駆けてきたルートは振り返って、誰もいないことを確かめる。
素早く服を脱いで、いつもの岩陰におしこみ、抜き手を切って泳ぎだした。

服の下に着てきた水着は濃い赤色で、子供っぽいデザインだ。
ルートは、海の揺らめく光の中、その色がとても美しく見えることを知っていた。

海の中には誰もいない。ここら辺は流れが速いし、魚が岬の向こうよりも少ないからだ。
ルートも、泳いではいけないと言われている。
でも、こちらの海は、小さな洞窟があったり、不思議な感じの岩がたくさんあって、いつまで泳いでも飽きないのだ。

海の中にいると、自分が一つの生き物なのだと思えて、安心する。
波の音。
胸の奥の心臓の音。
息継ぎをするときの、空気のおいしさ。


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