暖かく陽がさす夕方にはならない昼に、独りぼっちで花畑ではしゃいでいる少女がいた。


彼女はたくさんの花をちぎって集め楽しげに鼻歌を歌う。


肩までの短いミルクティーベージュの髪に花弁を絡ませて、桜色の小さな口に笑みを浮かべ、花冠をつくろうとしているのか、小さな指先は懸命に動いている。

なんどもやっていたのか少女の周りには作りかけのものが散乱し、みずみずしい花の香りが辺りを満たしていた。


そこへ少し強い風が吹き、少女の髪や服だけではなく、草花が傾きせっかく作っていた花冠が飛ばされてしまいう。

「あっ!まってぇっ!」

慌てて立ち上がるが、花冠は手の届かない高さまで上がってしまった。


手を必死に伸ばして追いかけて、それでも風に舞うそれはふわりふわりと行方を掴ませない。


なんとか掴まなくてはと、とたとたと走る少女の視線の先にあった黒い何かに花冠が音もなく落ちた。
少女は安堵してそれに近づく。