夜、眠るまえ、いつも泣いていた。

「ライオンがくるよ」

動物園の檻を破り、街を駆け抜け、窓ガラスを壊してこの部屋に飛び込んでくる。

「そんなことあるわけないでしょう」

わたしがどんなに訴えても、お母さんは聞く耳を持たず、ふすまの向こうへと行ってしまう。