いつも自分勝手で他人のことは常に後回しと言うのが王様で、誰に対しても優しくていつも笑顔なのが王子様だと、私は思っていた。

でも、それは私の中の勝手な偏見だった。

実際に会った王様はそれなりに自分勝手な人だったけれど、その分優しかった。


「――お姫様がいるのに…」

トイレの鏡を見ながら、私は呟いた。

今年の夏、私は人生最大の恋をした。

あの人には相手がいたものの、それでもいいから私は彼の隣にいたかった。

愛人でも、召し使いでもいいから、あの人のそばにいたかった。

けど、あの人のことを一途に思っているお姫様がいたから私はあきらめた。

「早くに出会っていたら、どうなっていたんだろう?」

ふと、そう思うことがある。

あの人と早く出会っていたら、私は幸せになれたのだろうかと。

未だに未練がましい自分に、自嘲した。