蒸し暑い夏の夕方、あたしは登り坂を歩いていた。
『タクシーでこればよかったな…』

しかしこんな細い道、タクシーも嫌がるだろう。歩いているあたしも少し憂鬱になる。

少し坂を登り続けると、目的のアパートがあった。
部屋の番号を聞かせられた数字の反芻し、インターホンを押す。

「はい」
『ジュエルです』

ガチャッ。

現れた男はそうとう待っていたらしく、少し頬が紅潮している。

『新規か…』
心の中で呟き、お邪魔しまーすと笑顔で部屋に入る。

「待ってたよっ」
『そうなんですかぁ』

甘ったれた声で営業スマイルを貼り付けて言うと、
客は満足そうに勃起し始めていた。

隣に座って一緒にタバコを吸っていると、時間を聞かないといけない事を思い出した。

『そーいえば、何分にしますー?』
「120分で」

私はバッグから、携帯を取り出しスタッフに電話する。
『リカです。120分で』

了解でーす、と呑気な声が返ってきて携帯をしまう。

「シャワー浴びる?」
『はぁい』

私はリカ。東京でも3位以内の人気に入るデリヘル店のNo.1だ。

店に誘われて1ヶ月。私の人気は他の女の子をどんどん抜いていった。

これは御遊戯。時間内の恋人を如何に演じるかの、ゲームだ。それが楽しくて仕方ない。

客は欲求不満だったのか、元々早漏なのか知らないがさっさとイった。
それを飲み込みオプション代を稼ぐと、再びシャワーを浴び、だらついて過ごした。

「リカちゃんさーすごい人気なんだよね?予約するの大変だったもん」

『まあ一応No.入らせてもらってるんで』

「ねぇまた来てくれる?」

『はい。何時でも』

にっこりしながら頷くと客は膝枕に頭を戻した。
直ぐに時間がきて、料金を受け取りアパートを出た。

もう微かに日が傾きかけてきた。これからの時間が稼ぎ時。

私は迎えの車に乗ると、次の客の処へ向かった。