“俺、酒飲んでないからさ。
柚の車運転してくよ”



そう言って運転席に乗り込んだ彼は。

今、私の車のハンドルを握っている。





…なんか不思議な感じ。

自分の車を違う誰かが運転してるって。





ボリュームを下げたオーディオから流れてくる音楽も。

車内に香る少し甘い香りも。

いつもと何も変わらないのに。

別空間に来ちゃったみたいな感じがするよ…。





ハンドルを握る横顔をチラリ。

盗み見すると。

水族館に行ったときと同じ横顔がそこにはあった。





…キレーな鼻筋。

“スッ”としてるよね。

…睫毛も長いし。

羨ましいくらい。

…肌もキレーだし。

その辺の“女の子”より。

よっぽと女の子らしい顔立ちしてる…。



…なんか“女”である私の方がダメっぽくない…?





…プッ…。

その時。

隣から小さく吹き出す音が聞こえた。