雲が綿菓子のように浮かぶ空に、朝日が昇っていく。


チュンチュンと雀の鳴き声がして、すごく爽やかな朝。


空港の前には、大きな旅行バックを持った生徒達がザワザワとざわめいていた。


そう、今日は高校最後の旅行行事。


修学旅行1日目。


「穂香、あたし達同じ部屋よ」


あーちゃんがしおりに目を向けながら、静かに口を開く。


「あ、うん……」


あたしが元気なく、頷くと、あーちゃんはあたしの顔を心配そうに覗き込んだ。


「心ここに有らずって感じね? もしかして、水沢日向のこと?」


あたしがコクンと頷くとあーちゃんは深いため息をついて、ショートボブの髪を触った。


「まあ、そんなこと言われたら、忘れられないわよ」


「うん……」


2週間前。

あたし達しかいない保健室で、あの険悪な雰囲気が一気にプレイバックする。


水沢日向クンが楓に言い放った一言。


「俺、学校一の王子様とか言って自惚れてる君がムカつくんだよね」


張りつめた雰囲気の中で水沢日向クンの声だけが響く。