そうして、仕事の話が一切出る事なく盛り上がっていた俺と平蔵さんだが。



話の中身はもちろん、彼のお気に入りでもある真咲のコトばかりだ・・・



「…意外に頑固者だろう?

本当に真咲さんは賢い女性だと、つくづく思うよ」


「いやー…、そうですね。

昔から負ける事が嫌いらしいですが…、まあソコが可愛い気も」


「ハハハッ、大和も形なしだ!」


「すっかり骨抜きですね」


俺の切り返しを受けて、じつに満足そうに笑ってくれるから嬉しくなった。



ずっと1人で彼女が頑張り抜けた理由のひとつに、平蔵さんの存在があるだろう。



父親という存在を心底で憎み、自分の器用さも好きになれないでいた彼女だから。



ただ純粋に実力をかってくれた会長は、真咲に自信を身につけさせた筈だと思う…。




すっかり話が弾んでいた時、トントンと重厚なドアをノックする音が響いた。



その音がした瞬間から、シーっと人差し指を立てて静かにさせる平蔵さん。



「はい?」


「恐れ入ります、沢井です」


「ああ、入っておいで」


俺に沈黙を保たせた彼と、ドア越しにやり取りをする仕事中の真咲の声。