大学卒業後は仕事中心に回っていた俺の人生は、ほんの数か月の間で激変した。



跡を継げという親父への対抗心から、実力成果主義の外資企業を選んだというのに。



ソレなりに楽しんで来た日々より、背負う物がある今の方が充実していると思う…。




「川崎さん!」


「ん、何だ?」


定例の会議を終えて部署へ戻ると、いつも以上に騒がしい部内で呼び止められた。



「A精機から発注を受けた、“マシニングセンター”の件で…」


「ああ…確か、納入が明後日の――

…で、どんなトラブルに?」


その部下の表情でピンと来た俺は、手にしていた資料等を一旦デスク上へ置いた。



ちなみに“マシニングセンター”は、フライス等の様々な加工を一台で行える機械だ。



「それがA精機…、民事再生法の申請を出すそうです。

社内通達が出てすぐの話ですけど、間違い無いそうで…」


「…そうか。行くぞ――」


普段はノー・ネクタイだが、ジャケットとバッグを掴んでから話を止めてしまう。