紘夜様が席を立たれてから、
しばらく、


実織様は、考え込む様に、動かなくなってしまった。



私は、紘夜様の席に用意した食事を下げようと、
ライ麦パンと胡桃パンをのせたお皿を片付ける手を伸ばすと、


「待って、静音さん」

実織様の声がした。


「いかがなさいました?実織様」

「…紘夜、戻ってくるかもしれないでしょう?」

「……残念ですが、紘夜様は戻られません」

「どうして?」


「煙草を、」

「え?」


「煙草を口にされたからです」

「煙草?」



「紘夜様の煙草は区切りの証です。
食事の時間はお終い、このお話はお終い。
ーーそういうことです」